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タクシー運転手の36協定とは一体何ですか6分で解説します。

車道沿いの道を歩いていると、早朝・深夜といった時間帯を問わず、タクシーが走っているのを見かけると思います。

これを見て、「タクシー運転手は四六時中働いて休みがなさそう、大変だなぁと思う方もいるかもしれません。

逆に、いまよりもっと稼ぎたいと思ってタクシー運転手への転職を考えている人は、

「休日もシフトに入らせてもらって、毎日朝早くから夜遅くまで働こう!」と考えているかもしれません。

しかし、タクシー運転手も会社に雇用されている労働者ですので、労働基準法により、働ける時間には制限があります。

そのため、上の2つの考えはいずれも合っていません。

ここでは、タクシー運転手の労働時間制限と密接に関わる、「36協定」というものから

タクシー運転手がどれだけの時間働けるのかを見ていきましょう。

一般的な場合の所定労働時間と36協定

まずは、そもそも「36協定」とはどういうものなのかを見ていきましょう。

労働時間と休日

36協定の前に知っておかなければいけないのが、労働基準法では「働ける時間(法定労働時間)」と「休まなければいけない日(休日)」が定められているということです。

まずは働ける時間についてですが、労働基準法第32条に定められています。

32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

要は、1日に働ける時間は8時間まで、週に働ける時間は40時間までということです。

18時間の週5日勤務としている会社が多いのは、このためです。

次に休日ですが、労働基準法第35条に規定があります。

第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

1項より第2項の方が条件がゆるいため、第2項だけ考えていれば大丈夫です。

要は4週間(ほぼ1か月)の間に4日の休みをとらなければならないということです。

以上が労働基準法で定められている労働時間と休日の原則ですが

これだけ見ると、「おかしい」と思われる方も多いのではないでしょうか。

と言うのも、世の中で働いている人を見ると、4日の休日はとれている人が大半のようですが

40時間については逆に大半の人が守れていないように思えるからです。

実は、一定の条件を満たせば週40時間以上働くことが可能なのです。

その鍵となるのが、労働基準法36条、いわゆる36協定について定められた条文です。

36協定

労働基準法36条は条文を載せるとかなり長くなるため、要点のみを記載します。

会社と労働者との間で協定を結べば、一定の範囲内での時間外労働、ならびに休日労働ができるというものです。

この時に結ばれる協定を一般に「36協定」といいます。

では、協定で月に200時間までの残業を認めれば200時間残業できるのかというと、そういうわけではないのです。

労働基準法36条には延長時間についても定められており、一般的には月に45時間、年に360時間です。

タクシー運転手の場合の所定労働時間と36協定

これまでは労働基準法に基づく原則を見てきましたが

実はタクシー運転手には一般的な延長時間(月45時間、年360時間)は適用されません。

タクシー運転手をはじめとする自動車を運転手する職業の人には

厚生労働省が出している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」というものが適用され

この範囲内で36協定を結んでいれば、一般的な場合を超える時間外労働・休日労働をすることができます。

運転手という仕事が一般的な働き方とは違う、ということでしょう。

この「基準」が、どのような内容になっているのか、詳しく見ていきましょう。

尚、この後の文章で「基準」とかいているある場合は、この「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」のことを指します。

タクシー運転手の法定労働時間

まず法定労働時間(残業にならない時間)ですが、ここは一般の場合と変わりません。

ただ、労働基準法では、必要がある場合に限り、法定労働時間を週40時間以内におさえられれば

18時間でなくとも問題ないという規定があります。

そのため一般的な場合は18時間を超えた場合が残業となりますが

タクシー運転手の場合は18時間を超えても、週40時間を超えるまでは残業になりません。

逆に言うと、週40時間を超える労働時間は全て残業です。

もっとも、歩合制のことが多いタクシー運転手にはあまり関係ないかもしれませんが

タクシー運転手の拘束時間

タクシー運転手独特の考えとして、「拘束時間」というものが基準で定められています。

「拘束時間」とは、「出勤から退勤までの間にある時間」です。休憩時間を含みます。

基準では、この「拘束時間」について制限がされています。

逆に言うとこの「拘束時間」内であれば、36協定さえ結んでいればいくらでも残業することが可能です。

日勤の場合の拘束時間の上限

日勤の場合は、1日の拘束時間の上限は原則13時間ですが、やむをえない場合は16時間まで延長できるとされています。

1か月の拘束時間の上限は299時間となっています。

20日勤務とすると1日約15時間ですが、月24日勤務とすると1日約12.5時間ですので

勤務日数が少ないと16時間の延長が多用できますが

勤務日数が多いと原則の拘束時間しか働けないと考えた方がいいでしょう。

隔日勤務の場合の拘束時間の上限

続いて1日働いたら1日休む、隔日勤務の場合です。

基準では、拘束時間の上限は121時間、1か月262時間と定められています。

隔日勤務は体への負担が大きいので、日勤と比べて1か月に働ける時間が限られているのですね。

尚、隔日勤務の場合は別途労使協定が締結でき、1か月の拘束時間の上限を262時間から270時間に延長することができます。

車庫待ちの場合の特例

都内のタクシー運転手は移動しながら客を探すことが多いですが

地方では車庫で待機しているタクシー運転手をよく見かけます。

このように、依頼があるまで待機する働き方をしている運転手については

別途労使協定で労働時間を延長することができます。

まず、日勤の場合は、1か月の拘束時間が322時間まで延長されます。

隔日勤務の場合は延長はありません。

次に、日勤・隔日勤務とも、連続4時間以上の仮眠時間を設けていれば

7回までは、1日の拘束時間を24時間まで延長することができます。

日勤の場合、1日の拘束時間が18時間以内であれば、仮眠は必要ありません。

勤務時間について、タクシー運転手が注意すること

この「拘束時間」に限らず、タクシー運転手は働き方に気をつけていないと

基準に引っかかる恐れがあります。

どのような点に気をつけたらいいのか、見ていきましょう。

タクシー運転手の拘束時間

厳密に言うと、拘束時間の算定は「出勤時刻から24時間」となります。

何が問題かというと、前日8時に出勤した人が翌日7時に出勤した場合

翌日の勤務が翌日の拘束時間に含まれるのは当たり前ですが

翌日の7時〜8時については前日の拘束時間にも含まれるのです。

そのため、拘束時間ギリギリまで働いた翌日には早く出社することはやめましょう。

タクシー運転手の休息時間

基準には、「拘束時間」とともに「休息時間」というものが定められています。

「休息時間」とは、「前の退勤から次の出勤までの時間」のことです。

例えばある日の20時に退勤し、次の日の7時に出勤した場合、休息時間は11時間となります。

この休息時間ですが、タクシー運転手の働き方に応じて、次のように規制されています。

日勤…8時間

隔日勤務、車庫待ち特例…20時間

日勤の場合、16時間(拘束時間上限)+8時間(休息時間)=24時間ですので

出社時刻が常に同じであれば休息時間は守られることになります。

隔日勤務や車庫待ちの場合も、次の日に予定を入れず

前の出勤と同じ時刻に出勤すれば、休息時間の規則に引っかかることはありません。

以上を踏まえますと、引っかかる恐れがあるのは次の場合だと思われます。

・シフトの関係で、前日より早く出勤する場合

・隔日勤務や車庫待ち明けの日に出勤しようとする場合

これらの場合は、基準で定められた休息時間を確保できているか、注意しましょう。

このように法律で決められているので、隔日勤務の場合は1日働いたいら20時間以上の

休息が必要なので1日休みというシフトになります。

実際のタクシー運転手のシフトがどのようになっているのかは以下の記事をご覧ください。

タクシー運転手のシフト勤務体系を実体験から分かりやすく解説します。

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タクシー運転手の休日の定義について

24時間の拘束時間もありうるタクシー運転手は、休日についての考え方も独特です。

基準では、「休息時間+24時間」の拘束されない時間が確保された時、その24時間を休日とみなすことになっています。

隔日勤務という働き方を知っている人は、「明け番の日を休日として扱えばいいんじゃないか」と思われるかもしれませんが

隔日勤務の場合、基準では「休息時間(20時間)+24時間=44時間」の時間が確保されないと、休日にはなりません。

そのため、2日おきに働く、つまり月1516日出勤だと休日がないことになるため

隔日勤務の場合は明け番+4日の休みが必要になります。

隔日勤務のタクシー運転手の出勤日数が月1113日となるのはそのためです。

この休日の定義で特に注意しなければならない場合は、休日明けに早く出勤する場合です。

例えば日勤の人が8時に出社して24時まで働き、翌日は出社せず、翌々日の7時に出社した場合です。

普通の会社であれば、出社しなかった日は休日とみなされますが

タクシー運転手の場合は「休息時間(8時間)+24時間=32時間」必要なところ

実際に休んだ時間は31時間しかないので、休日として扱われません。

すなわち、休日明けが元気だからといって早く出勤してしまうと

休日が休日にならなくなってしまうので気をつけましょう。

タクシー運転手の休日出勤について

日勤、隔日勤務問わず、休日出勤は2週間に1回までと定められています。

最低でも4週間に4回は休日となりますので、どんなに働きたい人でも、4週間に2回は働かない休日があることになります。

ここまで見てきたように、現在はタクシー運転手の労働時間は基準に基づいた拘束時間内であれば大丈夫なのですが

実は2024年からは、一般の会社とほぼ同じルールとなります。

原則月45時間、年に360時間というのは一般の会社と全く同じになります。

36協定では、原則を超えた残業を特別に認める、「特別条項」という規定を入れることができます(残業自体が36協定で定める特別なものなので、「特別の特別」といった感じで変なようにも思えますが!)

この特別条項の上限が一般の会社だと月に6回まで100時間まで残業でき、年間の残業時間合計は720時間までとなります。

これがタクシー運転手ですと、月に6回などという制限はなく、年間960時間が特別条項の上限となります。

一般の会社の1.3倍は残業できますのでまだ労働時間が長くできると言えそうですが

今までと違って特別条項を36協定に入れる必要があります。

また、日勤の場合、拘束時間上限で11時間の休憩としてしまうと特別条項の範囲にもおさまらないため

タクシー会社は今まで以上に厳密な労務管理を求められます。

まとめ

以上、タクシー運転手の残業時間について見てきました。

タクシー運転手は他の職業に比べて多くの残業ができる職業です。

しかし、あまり長時間働くと集中力が落ち、良い仕事ができません。

より稼ぎたい人は、急がば回れで休むときはしっかり休み、勤務日に効率的に稼ぐ力を養いましょう。

そもそも拘束時間が長くなるということは、それだけ自由になる時間が減るということです。

自由な時間を多くとれ、なおかつ稼げる働き方を心がけましょう。

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