皆さん、サガリというお肉をご存じですか?
「知ってる!」というあなたはなかなかのお肉通。
お店でもなかなか目にする機会はない珍しい部位です。
ときどきメニューに置いている焼肉屋さんも見かけますが、
注文された経験がある方はなかなかおられないでしょう。
聞き覚えがなくてどんなお肉かイメージできず、
結局カルビやハラミなどの定番にしました…という方もおられるかもしれません。
筆者はアルバイトをしていた焼肉店でメニューの1つだったので
幸運にも食べたことがあります。
その経験を踏まえまして、一言。
こんなおいしいお肉なのに食べないんじゃもったいない!!
ということで今回は、この”サガリ”についてご紹介していきます。
これを読めば、あなたもサガリに興味が湧いて食べたくなるかも!?
サガリとは?どこの部位?
ズバリ、サガリとは横隔膜(おうかくまく)のことです。
サガリの横隔膜とは?
横隔膜というと、人間だとしゃっくりのときに震えることで有名なあれです。
主に呼吸をするときに肺を広げたり縮めたりする呼吸筋の1つであり、
内臓を覆うようにして守る役割もあるようです。
あの横隔膜を食材としてみたときに”サガリ”と呼びます。
横隔膜自体は筋肉なのでサガリも本質的には赤身肉なのですが
殺された後の解体では多くが内臓処理のときに取り出されることから
内臓肉として分類されることもあります。
人間は二足歩行なのでちょっと事情が違うのですが
四足歩行の動物で見るとサガリは腰椎とよばれるところとくっついており
内臓を吊るような形になっています。
「内臓が吊り下がっている」ことが”サガリ”という
呼び方の由来になったといわれています。
ハラミとの違いは?
ところで、お肉に詳しい方の中には横隔膜と聞いてハラミを
思い浮かべる方もおられるのではないでしょうか。
その通りです、焼肉で人気のハラミも実は横隔膜のことなのです。
”サガリ”と”ハラミ”、同じ横隔膜なのに2つの呼び方があるのはなぜなのでしょうか?
この2つの呼び方は、横隔膜のどの部分を指すのかによって呼び分けられています。
具体的には背中側にあるのかお腹側にあるのかという違いです。
サガリは横隔膜のお腹側、厚みがある部分のことを言います。
これに対しハラミは背中側に近い薄い部分のことです。
捌かれるまではくっついているうえ、見た目も味わいも似ていることから
厳密に区別されずに一括で「ハラミ」として提供されることも多いです。
これには地域差などもあるようですが。
味わいについては、基本的にどちらも同じ横隔膜ですのでそこまで大きな違いはありません。
ただ、ハラミに比べてサガリはやや弾力があり、噛み応えが感じられます。
脂もハラミに比べて少なめで、単純に肉でお腹を満たせる
「ああ、今肉食ってる…」という感覚に浸れます。
この辺りは文章で書くより実際に食べていただいた方が理解できると思います。
「サガリ」と「ハラミ」がどちらもメニューにあるお店で、自分の舌で食べ比べというのもいいかもしれませんね。
それでは、ここからは各動物ごとに詳しく見ていきましょう!
牛サガリのご紹介
”サガリ”と聞いて多くの方が真っ先にイメージされるのは
この牛サガリではないでしょうか。
サガリの中では最もよく目にするものだと思います。
焼肉屋さんなどで見かけることがあります。
カルビなどと比べると少し弾力があって、脂が少ないことが特徴です。
脂が少ない分赤身の旨味が強く感じられます。
牛一頭から1 kg 前後しかとることができない希少部位です。
個体差もあるので参考値になりますが
牛サガリのカロリーは100gあたり283kcal です。
ハラミが324kcal 、カルビが465kcalにもなるので、
赤身肉の中ではかなりローカロリーな部位であることが分かります。
お肉食べたいけどカロリーが気になる、
というダイエット中の方や女性の方にもおすすめです!
豚サガリのご紹介
牛に比べると目にする機会は少ないのですが、豚サガリも食材として使われています。
北海道の富良野では盛んに食べられているようで、人気のご当地グルメの1つになっています。
豚一頭当たり250~300g程度しか取れないとのことなので、こちらもやはり希少部位です。
量が少ないうえ、とても傷みやすい部位でもあることがあまり市場で見かけない大きな要因のようです。
鳥サガリ(鳥ハラミ)のご紹介
たまに焼き鳥などで目にすることがあります。
独特のコリコリした食感が特徴的な部位です。
鳥一羽からわずか8gほどしか取れないそうです。
実は呼び方は”鳥サガリ”よりも”鳥ハラミ”の方が一般的なのですが、
本記事では牛、豚と並列で扱いたかったのでサガリの一つとして扱わせていただきます。
牛、豚サガリはかなりしっかりと食べ応えのある赤身肉なのですが
鳥サガリはまるでホルモンのような食感です。
この違いの秘密についてはこの後ご説明します。
焼き鳥のサガリ、焼肉のサガリ
ここまで牛、豚、鳥サガリについてそれぞれ紹介しました。
しかし、実はこの中で一つだけ仲間はずれがいます。どれだか分かりますか?
それは、鳥サガリです。このことについてお話します。
というのも、鳥には横隔膜がないのです。
横隔膜というのは哺乳類にしか備わっていない器官なのです。
「え、じゃあ鳥サガリってサガリじゃないじゃん」と思った方、その通りです。
ただ、鳥サガリは胸骨とおしりのあたりにかけてくっついており
内臓を覆うような形になっています。
この付き方から、横隔膜のような働きをしていることは事実です。
厳密にみるとサガリではありませんが、体の中での役割としては
横隔膜に近いことから、鳥サガリと呼ばれるようになったのです。
なので焼き鳥で出てくる鳥サガリは、焼肉で食べる牛サガリとは名前が一緒でも別物なのです。
今度お店で出てきたら、この知識を披露してみてもいいかもしれませんね!
サガリのオススメな食べ方
ここからは、サガリの食べ方についてご紹介。
なお今回は、もっとも目にする機会が多いと思われる
牛サガリのレシピについて主にご紹介します。
ド定番!牛サガリのサイコロステーキ
材料
牛サガリ 1パック
酒 大さじ2
醤油 大さじ2
塩こしょう 適量
step
1サイコロ状に切った牛サガリに塩コショウをふり、なじませる
step
2熱したフライパンで焦げ目がつくまで焼く
step
3酒、しょうゆを加えてからめる
step
4お皿に盛りつけて完成
サガリは焼きすぎると硬くなります。
少し中が少しレアぐらいで加熱をやめ、あとは余熱で火を通すぐらいのイメージで大丈夫です。
市販のステーキソース等を使えば手軽に本格的な味が楽しめますよ!
じっくりコトコト、デミグラスソース煮込み
材料
牛サガリ肉 500 g
赤玉ねぎ 1個
赤ワイン 150 cc
水 300 cc
デミグラスソース 140 g
step
1表面に切れ目を入れたサガリとくし切りにした赤玉ねぎを鍋に入れ、赤ワインを入れて30分漬ける
step
2水を加えて肉が柔らかくなるまで煮込む
step
3デミグラスソースを加えてもうひと煮立ちさせる
step
4お皿に盛りつけて完成
焼いたときとは一味違った、柔らかな食感が楽しめます。硬さが気にならない分、お肉の旨味が強く感じられますよ!
今回は牛サガリのレシピについてご紹介しました。
豚サガリ、鳥サガリも多くは牛サガリと同様に焼いて食べられることが定番のようです。
素材自体に味わいがあるので、調理についてはあまり難しく考えなくても大丈夫です。
サガリは希少!?どこで買える?
先ほどもご紹介したとおり、サガリは一頭からわずかしか取れない希少な部位です。
スーパーなどで見かけることはまずないと思います。
しかし、ネット通販では外国産、国産や内容量などによって様々な品ぞろえがあります。
あくまで参考にですが、国産にこだわらないのであれば
牛サガリは1kgあたり3000円前後
豚サガリは国産でも1kg あたり1500円前後
鳥サガリになると1kg あたり1000円前後
が相場といった感じです。
牛サガリはさすがに値が張りますが、意外にも豚サガリと鳥サガリは
スーパーで買うお肉とそれほどお値段変わらないですね。
希少部位なのに!!
サガリを食べてみたいという方はインターネットで通販サイトを探してみてください。
鳥肉の価格はなぜ安い?
※ここからは余談です。興味のない方は飛ばしていただいて構いません。
今回のサガリに限らず、スーパーや精肉店に売ってるお肉の値段ってどの部位でも
牛肉>豚肉>鳥肉
ってなってますよね。
でも単純に考えて、一頭(一羽)からとれるお肉の量は
牛>豚>鳥
ですよね。
なぜ、一羽からちょっとずつしか取れない鳥肉の値段が一番安くて
一頭からたくさん取れる牛肉が高いのでしょうか。
お店で売られるときのお肉の値段は、「そのお肉が出荷されるまでにかかった費用」によって決まります。
肉牛は一般的に出荷まで2年半前後かかると言われています。
当然その間エサ代がかかります。
また、牛のストレスが肉質に影響するようなので、ブランド牛になると一頭あたりに
何ヘクタールという広大な土地で放し飼いにしたりします。
当然生き物なので病気にかかって出荷できないリスクもあります。
これに対して、肉用の鶏(ブロイラー)は2か月ほどで出荷することができます。
肉牛のおよそ15分の1です。
その点もちろんエサ代は牛よりも安く済み、単純計算で肉牛が一回出荷するまでの期間で10回以上は出荷できるわけです。
また、個体が小さいので牛よりも狭いスペースに高密度(2階建てにするなど)で飼育できます。
よって一回に出荷できる個体数も多くなります。
さらに、出荷までの飼育期間が短い分、病気で出荷できないリスクも抑えることができます。
ちなみに、日本国内で食用の飼育頭数が一番多いのは鶏です。
上記のような時間、経費、リスクという側面に加えて
供給が十分に足りているからこそ国産でも手ごろな値段で買えるのですね。
まとめ
いかがでしたか?
あまり聞きなじみがない”サガリ”について、牛、豚、鳥それぞれについてご紹介しました。
少し硬めではありますが、ローカロリーでお肉の旨味を味わえるとてもオイシイ部位です。
次回お店で見かけたときにはぜひぜひ試しに食べてみてください。きっとそのおいしさに驚くはず。
それでは、また別の記事でお会いしましょう!